人間の発達とは
ここでは、人間の発達について、学びましょう。
発達の定義と歴史
そもそも、発達とは何でしょうか。教科書に書いてある定義としては、「個体と環境との継続的な相互作用を通して、様々な機能や構造が分化し、更に結合された個体が機能上より有能に、または構造上より複雑な存在になっていく過程」と書いてあります。ぶっちゃけ難しく書いてあって、よくわかりません。
そもそも昔は、発達は青年期(すなわち私たちの代。18~22歳程度)で終わると考えられてきました。そのため、昔は「児童日記」などで、発達を研究していました。
児童日記…児童の成長を記録したもの。主に外見的な発達がメインだった。
しかし、月日が流れるにつれて、発達は生涯続くという考え方に変わりました。1970年頃には、これまで「児童心理学」「青年心理学」「老年学」など、年齢区分ごとにバラバラに切り離されていた学問が、「生涯発達心理学」として、確立されていったのです。
発達の規定因 ~遺伝か環境か~
発達を規定している要因は、その人が置かれる「環境」なのか、その人が受け継いだ血、すなわち「遺伝」なのかは、昔から論争が繰り広げられてきました。これには、大きく3つの考え方があるとされています。
① 単一要因説 ~氏か育ちか~
発達の規定因を「遺伝か環境か」のいずれか一方とする考え方です。
Ⅰ:生得説
生得説とは、遺伝を重視する考え方です。有名な実験研究として「ゲゼルの階段登り実験」があります。
彼は、双子の子どもを対象に、階段登りを題材にした研究を1929年に発表した。まず、生後46週の双子の子どもの一方に4・5段ほどの階段を上がる練習を6週間継続した。その結果、26秒で階段を上がることが出来るようになった。そして、もう一方(生後52週)の子どもにも同様に階段登りを行わせると、初めは45秒かかったが、同じように練習を開始すると、わずか2週間の練習期間で10秒で階段を上がれるようになった。
ここで重要なのが、経過週数の差です。一方の子は、もう一方の子よりも6週間も早く階段登り訓練を始めました。6週間早い子は、その時点ではもう一方の子(階段登りの訓練をその時点ではしていない子)よりも環境は良いと考えられます。しかし、結果は訓練の開始が遅い方(環境としては悪い方)が、優位でした。
これ以降も実験を行いましたが、55週以降は差がなかったことから、ゲゼルは「人が成熟しなければ、どんなに環境が関与しても効果が薄い」と考え、レディネス(心身の準備)の重要性を述べました。
つまり、環境よりも成熟が発達には大きく影響しており、「生得的要因の優位性」を示しました。
Ⅱ:経験説
これは、生得的要因(=遺伝)よりも、経験による学習こそが発達を決定付けるという考え方です。こいったものを行動主義と言うのですが、これを確立したのはワトソンという有名なやつです。
ワトソンは、「自分に子供を預けてくれるならば、どんな職業にでもしてみせる」と言った。すなわち、遺伝は一切関係なく、全て経験(学習)が発達に寄与するとした。
上記の例は極端ですが、遺伝よりも環境(経験・学習)が大事と考える研究者もいるわけです。
② 輻輳説(ふくそう)~氏も育ちも~
これは、単一要因説とは異なり、人間の発達には「遺伝も環境も」関係しているとする説です。
この説で有名な研究者はシュテルンというやつで、加算的寄与説とも言われています。
加算的寄与説
Xを発達的要因としたとき、それぞれの影響度合いをU・Eで表しています。今回の図1-1であれば、環境も遺伝も半々に働いて発達していることを図示しています。この発達的要因は、遺伝的要素が大きければ環境的要素は少なくなるので、対極説とも言われています。
相互作用説
輻輳説と非常によく似ていますが、遺伝と環境は相互に影響し合っており、相互に影響を与えることによって、発達的変化が生じるという考え方です。う~~~~~~んわからん!何が違うんやろなこれ。
代表的な研究者はジェンセンで、環境閾値説(いきち)があります。
環境閾値説
これが縦軸が発達度合、横軸が環境条件(不適切から最適まで)を表しています。特性Aは、環境が相当悪くなければ、顕型化(発達がはっきり出ること)することを意味しており、身長や体重などがあります。極端に低い身長や低体重などは、環境が極端に悪い必要があるわけです。
一方特性Dは、絶対音感などの特定の訓練や好適な環境条件が無ければ、顕型化しないことを意味しています。
ちなみに臨界期というのも絶対音感や言語習得には関わっていると言われています。
これは、ある時期を境に吸収力が大幅に落ちるところを言い、絶対音感は3歳~9歳、語学は0歳~9歳までに適切な教育を施さなければ、習得が難しいと言われています。